12の精霊核

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prologue(幕開け)

 そよ風が森の梢を騒がせています。さわさわと聞こえる木々のお喋り。見上げれば、淋しさ、儚さを湛えた涙色の空。晴れていても曇っていてもリテールの「エルフの森」と言えばいつの頃からか、そんな佇まいを見せていました。けれども、その哀愁を帯びた雰囲気はくたびれた旅人たちの疲れを癒し、近くの村人に憩いを与えています。
 それも、古くから語り継がれる小さなお話、ドライアードのジーゼの物語のせいかもしれません。森の入口に立って、いえいえ、遠慮せずに森の奥まで、そっと、森の生き物たちを驚かせないように歩いてみてごらん。そうしたら、ほら聞こえるでしょう? ジーゼの透き通 るような歌声が。そよ風と、それに戦ぐ木々と一緒に奏でるその歌がとても切ないから、エルフの森は「涙色」なのでしょうか?
「ジーゼ……どうしてそんなに淋しそうに歌うの?」
 ジーゼに心の中で優しく問い掛けます。もしも、ジーゼが微笑み返してくれたのなら、微睡みの中に愉快でいて哀しい夢を見るでしょう。そう、それがドライアード・ジーゼの……この「エルフの森」に伝わる物語。では、ちょっとだけご一緒しましょうか?